7人の恋人
ひとりだった頃
1
3年間慣れ親しんだ制服にも今日で別れを告げる。
空はまるで予定されていたのように雲ひとつない。
春らしいにおいの風が私たちの頬を掠め、
涙は粒になって頬を伝うのを待っていた。
私は今日、高校を卒業した。
長く苦しかった受験戦争から解放されたあとは
この日まであっという間だった。
恋愛ごととは縁のなかった私だけれど、
友達とはそこそこに仲を深め、
無事に今日は涙を流す卒業式を迎えることができたのだ。
「卒業おめでとう、かあ」
昨日の放課後にみんなで描いた黒板の文字を眺めてつぶやく。
カラフルなチョークで黒板いっぱいに描いた文字。
鳥の絵とか、星とか、イラスト上手な子のやたらと上手い女の子の絵とか。
所狭しと黒板を埋め尽くして、慣れ親しんだ教室のメインとなっていた。
「今日で最後なんだね…本当に。」
私の隣で同じようにして眺めていた友達が言う。
「そうだね…。」
終わりなのか、始まりなのか、
卒業というものはどっちなんだろうかという考えが
ふと頭をよぎったが、今日が「最後」な物事がたくさんあるのは確かだった。
「また会えるよね?」
「もちろん!絶対にまた会おうね!」
私たちは涙を目に溜めて抱き合うと
互いの背中をぽんぽんと叩いた。