君が、あの夏だった。




彼女は絶対に俺の名前を呼ばない。



あの日から。



1回も。




ずっと、あんた呼ばわり。






今だにキーキー叫んでいる義母の後ろから、びしっとスーツを着た父が出てきた。




心なしかその顔が少し疲れている気がするが、気にしている暇はない。




「おぉ、優か。準備はできたか」




父の登場に義母は不満そうに口を閉じてヒールを鳴らしながら階段を下りていった。




「はい、できました」



「そうか」








< 12 / 17 >

この作品をシェア

pagetop