僕の気持ち 私の気持ち SS
次の朝。
「あきみー」
玄関先で、今日もたっちゃんが私を呼ぶ。
「今行くー」
外は、今日も快晴で風が心地いい。
急いでたっちゃんのそばに駆け寄ったら、自転車がいつもと少し違っていた。
「たっちゃん、これ」
私は、驚いてたっちゃんの顔を見た。
「これでもう、痛くないだろ」
たっちゃんは、驚く私の目を少しだけ見た後、すっごく照れくさそうにさっさと自転車にまたがってしまった。
私が座るいつもの指定席には、桃色のクッションが敷かれていた。
お尻が痛くないように、たっちゃんがくくりつけてくれたんだ。
私は、ふわふわのクッションを見て嬉しくなる。
「ありがとう、たっちゃん」
指定席に座って、たっちゃんに言ったら。
「行くぞっ」
って、照れたように言って走り出す。
私の指定席は、たっちゃんの後ろ。
ぶっきらぼうで、不器用で、あんまり愛想もないけど。
本当は、すっごく優しいたっちゃんに、今日も私はギュッとしがみつく。
そして、この先もずっと、一緒に風を切って同じ景色を見ていくんだ。
おしまい