僕の気持ち 私の気持ち SS


タチタチと玄関先に水溜りを作っている亮太に、私は急いで部屋に戻りバスタオルを手に持ち玄関先へ舞い戻る。

「はい」
「さんきゅ」

ゴシゴシと渡されたタオルで坊主頭を拭く亮太。
頭の形が綺麗だからできるヘアスタイルだよね。

「亮太、坊主でよかったね。頭だけはすぐ乾くよ」

からかい半分でニヤニヤしてると、わざと怒った顔が企みを含んで私を見返す。

「ななっ。お前、そういう事言うか」

亮太は、片方の口角を上げるとイタズラな笑みを向けてきた。

ん?
その不敵な笑みは……。

危険信号を察知した私は咄嗟に身を引いたのだけれど、それよりも亮太の方が素早かった。
私が動き出すより先に、グショグショになってしまったお気に入りのスニーカーをさっと脱ぎ、びしょぬれの身体で抱きついてきたんだ。

「みちづれだっ」
「きゃあーっ! いやー。もう、濡れちゃうってー」

ギュッとされて、いいように絡みつかれて、あっという間に私の部屋着もビショビショ。

でも、なんだか楽しくて。
きゃあきゃあ 言って。
ケラケラ笑って、騒いで。
廊下でじゃれあっていたら、濡れた足元がズルッと滑り、二人で豪快に尻餅をついちゃった。

「いってぇ~」
「いたぁ~い」

抱き合ったまま廊下で転んで、それでもなんだかおかしくて。
クスクス、ケラケラ、笑っていたら、視線が合ったところでチュッとキスされた。

少し驚いたけれど、凄く嬉しくて、私たちはまた目を合わせて笑いあう。

「風邪ひいちゃうよ」
「じゃあ、一緒に風呂はいるか」
「うん」

土砂ぷりの雨も、悪くないね。






  おしまい





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