僕の気持ち 私の気持ち SS
時を止めたかった
―――― 時を止めたかった ――――
雄太 (ゆうた) 頼子 (よりこ)
幸せだって思う時間はつも短く、あっという間に過ぎていく。
そうして、別れ際には、いつも心がキュッとせつなくなるんだ。
大人びた笑みを向ける雄ちゃん。
いつだって優しい微笑を私に向けてくれる。
ゆっくり歩く帰り道。
握った手からは雄ちゃんの温かさ。
雄ちゃんの手には、私からの温もり。
大きな手に繋がれていると、とても安心できるんだ。
オレンジ色の夕日が、たくさんの建物を奇麗に染めていく。
「雄ちゃん。夕焼けに染まった町、凄く奇麗だね」
「うん」
土手沿いの川向こう。
夕日に照らされた町や川が、綺麗に染め上げられていく。
「この景色。ずっと見ていたいね」
「うん」
穏やかな返事と優しい笑顔に、私の心が凪いでいく。
「夕日を見たあと目をつぶるとね。奇麗なオレンジの町並みが瞼に焼きついて、ずっとずっと夕暮れみたい」
私の言葉に雄ちゃんもゆっくりと目を閉じる。
「本当だね。頼子と見た景色が奇麗なまま瞼に残る」
手を握ったままの雄ちゃんから、緩やかな呼吸が伝わってくる。
このまま、この時が永遠なら。
二人で見た夕日を変わらずこのまま、時を止めてしまえたら。
幸せなこの気持ちのまま、ずっと、ずっと――――。
おしまい