僕の気持ち 私の気持ち SS


「あ~あ」

お箸を口にくわえたまま、青空に向かって零す。
そんな私の姿を見て、由紀は幸せ逃げるよって隣で笑う。

幸せが逃げちゃうのは、嫌だけど。
“あ~あ”は、“あ~あ”なんだもん。

私は、いつになったら久嗣君とお話ができるようになるんだろう。

告白しちゃえば? て、また由紀がニコニコしながら笑う。

わかってるよ。
わかってるんだけどね。

……あ~あ。

空を仰ぎ見ていたら、ガチャリと勢いよく屋上のドアが開いた。

「あっ。みっけ」

えっ、久嗣君!!

びっくりする私たちのそばに、何故か久嗣君がやって来る。

「由紀。先生が生徒会のことで話しあるから直ぐに来いってさ」

由紀は、えぇー。なんて言いながらも、素早くお弁当片付けて行っちゃった。
私の耳元に、頑張ってって囁いて。

取り残された私は、久嗣君と二人っきり。

ドキドキなんてものじゃない。
心臓が破裂するかもしれない。

「隣いい?」

心臓バクバクで緊張の私とは対照的に、余裕の笑顔の久嗣君。
キラキラとまぶし過ぎて、眩暈がしそう。
なんなら、このまま倒れてしまえれば、幸せなまま天国へいける。

なんて、余りのことに現実逃避。

空は相変わらず青くて、食べてるお弁当はいつもの物。
違うのは、キラキラ笑顔の久嗣君が、由紀の代わりに隣で私を見てること。

「俺も、明日からここで一緒に弁当食おっかなぁ」

青空を眩しそうに仰ぎながら言った久嗣君の言葉に、胸のドキドキが止まらない。

いつものお昼休みが、キラキラに変わっていく。
自然と目じりが下がって、私は眩しさに目を細めた――――。





    おしまい







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