月光の降る世界へ
いつもなら、もの凄い速さで追いかけてくるのに・・・・・・
後ろから聞こえてくる、足音はとても小さいものだった。
ふと振り返ると、それの足音は誠太郎だった。
トコトコと走ってくる姿。
それは、今命懸けの鬼ごっこをしているのを忘れてしまう位の愛らしさ。
思わず立ち止まり、誠太郎の前に屈んでしまう。
・・・・・・誠太郎の背後に、黒い影が迫っているとは気付かずに。
ゴッッ
「痛いですっ!
誠太郎、こんな怖いおじちゃんほっといて、遊びましょう」
力任せに殴られた頭を抑えながら、細い腕を引いて、走る。