蒼碧

――…



「……総さん…?」



安芸は、ゆっくりと瞼をあけた。


目の前には、深い寝息を立てる愛しい人。


たった昨日一緒に過ごしただけで、格段に総への想いは深く、強くなっていた。


繋がれたままの手が愛しくて、安芸はそっと総の指先に口付けた。


温かくて、そして逞しい総の身体に、自分の体を寄せた。


総の心臓の音でさえ、今の安芸にとっては愛しくて仕方ない。


触れる肌に、唇寄せていく。


触れるだびに、もっと、もっと…と欲しくなる。


様々な人と身体を重ねてきたけれど、こんな気持ちになるのは初めてだった。


未だ眠っている総の唇に、そっと口付ける。



「総さん…」



わけもわからず涙が零れ落ちた。


こんなにも幸せなのに、どうして涙が零れてくるのだろう。
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