蒼碧
けれど


私が涙を流しながら逃げようとした時


それは、鬼のような形相でこう言われた。



「ここで逃げたら、安芸ちゃんの利用価値はなくなるよ。それでもいいのかな?安芸ちゃんは、お母さんを見捨てるんだね」



そういわれて、私がいなくなったら、誰がお母さまにお線香をあげるんだろう。


誰が、月命日に、お墓にお花をあげるのだろう。



誰が……



私は、涙を拭うこともせずに、そのまま、おじ様に抱かれた。


心を無にすれば、悲しくも辛くもなかった。



ただ



どこかわからないけれど



痛みだけが残っていた。
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