蒼碧
「……どういうことなの。お父様…」
ギリギリ、と布巾を握り締める雅に慌てて、父親は話す。
「何かの手違いだろう。なぁ、雅…、」
「あの女…っ!総さまに会っていたって言うの!?」
「そんなはずはない。会えるわけがないだろう」
「じゃあ、どうして、総様は、安芸をご所望されるの?おかしいじゃないっ!帰るわ、私、帰るっ!!」
取り乱したまま、料亭を出る雅を慌てて父親は追いかける。
女将に謝り、そのまま2人で家へと向かう。
「ずっと、憧れだったのよ…」
「あぁ」
「ずっと、憧れていた総さまにやっと会えたのに、こんな仕打ちってないわ…」
「そうだな…」
やさしく雅の肩を抱いて慰める。