蒼碧
「あの女…許さないわ」


「…安芸は、会ってないはずだ」



父親は、どうしても腑に落ちなかった。


安芸のことを、もし総が知っていたとするなら、どこで会うことができたのだろうか。


安芸は、基本的に1歩も家からは出れないようになっている。


離れから本宅に向かう時でも見張りがいる。


携帯さえ持たせていない。


その安芸がどうやってあの宗元さんに…


父親が考えあぐねいていると、いつのまにか車は家に着いていた。


父親よりも先に、雅はバタバタと車を降りて、家の中へと入っていった。



「まずいな」



雅は逆上すると、手がつけられない。


兄の遙なら、なんとか抑えることができるが、自分では無理だと自負していた。


安芸は、あれでもいい仕事をしてくる。


あれの顔や体を傷つけられるのは、少しばかり避けたい。


父親は、少しばかり早足で雅を追いかけた。
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