蒼碧
「…安芸さま、」


「あなただけね…、私にさまをつけるのは」


「雅さまの妹君でいらっしゃいますから」


「……そうなの」



まるで、他人事のように返事をした。



「雅さまも落ち着きました故、ご安心ください」


「ありがとう…」



ゆっくりと天井を見つめた。



「それから、今日は、何もない、とお父上からの伝言です」


「…ありがとう」



スッと、蔵宇都が立ち上がると、



「安芸さま」


「なに?」


「宗元総さまをご存知ですか?」


「……宗元…?」



私の言葉に、蔵宇都は、「知らないのなら結構です」と部屋を下がっていった。
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