蒼碧
車が止まり、いつものように、降りようとすると



「…お嬢様」



なつかしい言葉が聞こえた。


いつも、蔵宇都はわたしのことをお嬢様、と優しく呼んでくれた。


他の誰も私のことをお嬢様だなんて呼ばなかったから。


こんなに離れていたのに…心が、体が…まだ、覚えてる。


蔵宇都の「お嬢様」の声。



「なあに?」



私も昔と変わらない返事をした。
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