蒼碧



「なぁにぃ?今更、毎日のように私としてたのに」


「私には」


「安芸がなによ」


「………」



その名前を言われると辛い。



「言ったじゃない。安芸の幸せを思うなら、私を抱きなさいって」


「………」



否定を強く表すかのように黙り込む蜜季を見て、雅ははぁ、とわざとらしくため息を零した。



「…はぁーあ、使えなぁい。じゃあ、もうこの家から出て行って」


「………」


「そういうことよ?もう二度と安芸とは会えなくなるのよ?あなたの愛しの安芸ちゃんに」



ニヤリ、と口で弧を描くこの女ほど、憎いと思ったことはない。


安芸さまを、遠くからでも見つめられるのならと、受け入れた雅お嬢様との時間。


苦痛でしかなかった。


瞳を閉じて、何度もこれが安芸お嬢様だと思い、抱いてきた。
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