蒼碧
あれから蔵宇都は、何度も私の前に現れた。


まるでお付きだった頃のように、傍にいようとしてくれた。


けれど、一度知ってしまった事実は変えようがなくて


蔵宇都をみれば私のフィルターには、お姉様と愛し合う蔵宇都が浮かび、嫌だった。



「お嬢様」


「………」



なんとなく返事をするのが億劫で、ぼんやりと外を眺めていた。


すると、蔵宇都は車を脇道に止めた。



「……蔵宇都?」


「お嬢様」



蔵宇都は後ろを向いて、真っ直ぐな視線を私に向けた。



「なに……?」


「私は、お嬢様が好きです」



言われた言葉に、思わず絶句した。



「お嬢様の為なら、この命惜しくなどありません」



蔵宇都は、迷いのない瞳で私を見つめる。
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