蒼碧
「………」


「お嬢様さえ望むのなら、私は」


「…蔵宇都」


「……はい」


「早く車を出して」


「………」


「……蔵宇都」



蔵宇都は、一度落とした視線をまたゆっくりと上げた。


納得のいかないような顔をする蔵宇都に、安芸はため息を零して言った。



「私、お母さんを見捨てることなんてできない」


「………」


「気持ちはとても嬉しいの」


「………」


「ありがとう…」



蔵宇都は、何の言葉も発しないまま、車を発進させた。
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