蒼碧
転機
--…
「あら、安芸じゃない」
「お姉様…?」
総さんとの至福の時間を終えてから、料亭を出た木の陰には雅お姉様が立っていた。
「今から帰るの?」
「はい」
「……今から、蔵宇都の運転する車に乗るの?」
「………」
「あら、別に責めているわけじゃないのよ?」
ふふふ、と赤い唇に弧を描いて笑うお姉様を、本気で気持ち悪いと思う自分は、妹失格なのだと思った。
「ねぇ、知ってる?」
ゆっくりと、私に近づくお姉様。
「蔵宇都の指って気持ちいいのよ?」
いやらしく私の手を握ってきたことに、寒気がした。