蒼碧
「だって、もしあれが自分だったらと思うと……、ねぇ?蔵宇都」



私の傍にいる蔵宇都に、話しかけた。


返事がないことなんて、最初からわかっていたけれど。



「雅…!」



私に必死の形相で怒りに震えるお父様を、遙お兄様の冷静な声が遮った。



「父上」


「……遙…っ」


「どういうことです。安芸に何を強いていたのです。高校にも通わせていないとか……、一体、父上は安芸に何を」


「お相手よ」


「……相手?」


「お父様の大切なお話し合いの時には、必ず安芸が呼ばれるの。意味、わかるでしょう?」



勘のいいお兄様なら。
< 89 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop