蒼碧
ぬるま湯

--…

あれから私は、総さんの保有するマンションへと連れて行かれて、そこで暮らし始めていた。



「……おはようございます」


「おはよう、安芸」



何もしないでいい、と言ってくれた総さんに、ただ甘えることなんてできなくて。


私は、私のできる精一杯のことをして、総さんとの生活に幸せを感じていた。



「お、今日は焦げなかったんだ」


「はい。…火加減、やっとわかってきました」



あの離れに住んでいた頃は、食事も全て配膳されていた。


だから、料理なんてしたこともなかったから、初めて包丁を握った時、調理をした時、私は世間知らずなんだなって……本当に実感して、情けなくて泣きたくなった。


そんな私を総さんはただ優しく抱き締めて、「今からここで、今までの時間を取り戻していけばいい」と言ってくれた。


総さんは、一緒に暮らしていて何も私に求めてきたりなどしない。


いつも優しく、


本当におひさまのように私のことを見つめてくれている。


とても幸せで、今までのことが夢だったんじゃないかと思うくらい……温かな日々だった。
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