なつみかん




視界が黄色と緑色で埋められた時、夏樹くんがその中に飛びこみました。


「え」

「柑夜、今日は俺を見つけるまで帰ったらダメだから」

「はいぃ⁉ ちょっ、待っ」


ガサガサと音だけを残し、完璧に消えた彼を追うためにわたしも飛びこみました。

つまりはかくれんぼ。


わたしと同じくらいの高さのあるそれは、ひまわり。

ここはひまわり畑でした。


よくわからないのに走り出したまま。


勝手に帰るのもアリですが。

きっと夏樹くんはわたしのことをずっっっと待ち続けると思うのです。

わたしが逃げたなんて思わず、「まだかな」なんて。

そんなに信じられては────帰れないじゃないですか!






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