なつみかん
川となつみかん
さらば、静かな夏。
「水着、着ろ」
わざわざわたしの家まで来て、夏樹くんは言いました。
「──え?」
久しぶり、の言葉もなく突然コレですか。
一年ぶりに見た彼は随分と背が伸びています。
とっくに成長期の終わったわたしには羨ましい限りですね。
坊主頭に焼けた肌。
田舎の子を連想させます。
まぁ、田舎の子はわたしの方なんですが。
有名なスポーツメーカーのTシャツと膝までのジャージという服装ですね。
そして──持ってます。
右手には今年もなつみかんが常備ですっ。
「着ないならそのまま行くぞ」
「いやいやいや、ちょっと待とうよ夏樹くん」
悟りました。
理由を訊いていたら着替えることができないと。
嫌な予感がするので着替えます。
何しろわたしの勘はよく当たるのです。