なつみかん
「あの、気にしないで、うん」
「は?
……ま、花は見られなかったから、これやるよ。じゃ」
何やらポケットから取り出したものをわたしに押しつけ、彼は走って帰りました。
ああ、石につまずいて、大丈夫でしょうか。
「ってこれ、なつみかんの花の、押し花──?」
ラミネート加工されたこの商品は、確か夏樹くんの農家の商品です。
彼、勝手に作ったのでしょうかね。
いや、もしかして、家にあったのを取って来た⁉
……きっと大丈夫ですよね!
ややこしい羽目にはならないと信じておきますっ!
最終的につまり。
夏樹くんはこの花の意味を知らずにしたのでしょう。
ですが、これじゃあ告白ですよ。
「ふふ、でも、ありがと」
静かに押し花へと唇を寄せました。