なつみかん
そんな日々を過ごし、六年前。
小学六年生のとある日、わたしたちは木に登りました。
夕暮れ。
太陽が沈む時を見ようと。
彼の家の大木の、一本の枝にふたりでまたがります。
ちなみに、折れることはあり得ない巨大さで、安心です。
静かさの中、髪が触れるほどの距離が気になってしまいました。
「蜜樹くん、ち、近くない?」
蜜樹くんから離れようとしたわたしは枝の先へと。
当然、木の安定の太さはなくなりました。
「え、そんなこと……って危ない!」
「ひゃあっ」
蜜樹くんが落ちかけているわたしを掴みますが、子どもの腕力。
引き上げるも、反動で彼は下へ、下へと落ちて、いきます。
どこからか、彼の「うわあああっ」という叫びが聞こえたように思いました。
泣きながら降りてみると、夕日で赤く染まった蜜樹くんのこめかみから額にかけて紅があったのでした。
生々しい傷跡に息を呑みます。
続けて出たのは掠れたかすかな声。
「み、つき……く──」
事実がうっすらとわかると、わたしから悲鳴がほとばしりました。
蜜樹くんには生涯消えない傷が出来ました。
つけたのは、わたし。