なつみかん
次の年、彼と会うのが恐くて恐くて。
傷跡が気になってしまうでしょう。
そして何よりも彼はわたしを恨んでいるに違いありません。
嫌われてしまったことを実感したくなかったのです。
「柑夜、蜜樹くん来たよ」
お母さんのドアごしの言葉に肩がピクリと反応しました。
開けられないようにドアにもたれかかります。
「いないって言って」
自分でもわかるほど堅い声。
「え、どうしたの。
いつもあんなに蜜樹くんに会えるの楽しみにしてたじゃない。
バカなこと言ってないで」
「いいからいないって言って!」
ヒステリックな声を出し、お母さんの言葉に耳を塞ぎます。
嫌だ。嫌だ。聞きたくない。
目を力いっぱい瞑った時、彼の声が聞こえました。
前と変わらない声が。
ですが、
「いいんです。
お邪魔、しました……」
泣きそうな、声でした。
「ごめんねごめんねごめんね、ごめ、ねっ」
ずるずると滑り落ち、蜜樹くんの足音を聞きながら、ドアにもたれかかりました。
どれだけ心の中で叫んだって、届くわけなどなかったのです。