なつみかん
「なつみかんが何の花とされてるか知ってるよな」
「わたし、地元なんだけど。
『愛の花』でしょーが」
今日の彼はいつも以上に自由で変です。
困ったものですね。
「俺のやった押し花、大事にしろよな。じゃ、また」
この町を出るとは思えないほどあっさりと、いつも通り走っていきました。
……あ、やっぱりつまずきました。
返事も聞きやしませんし。
いつだって言い逃げですねえ。
「……ん? 押し花?」
うー、と唸りながら考えます。
……あぁ! 確かに貰いましたね!
ひまわり畑に行った日のことでした。
なつみかんだったため、嬉しかったですが、これでは告白だと、思って────。
「あれ」
知ってました、よね。今。
意味のこととか、正しく。
それなのにくれたってことは。
「え。──────────えええええ⁉」
驚きと、困惑と、照れとが混ざった声がその場に木霊しました。