運命ってありますか?
アレンSide

歌恋と初めて会ったとき、暗くてよく見えなかったせいか、一瞬だけ…ジェシカに見えた。
そのせいか、無性にも助けたくなってしまった。

その歌恋が、今ルーク様のお気に召しそばに置かれている。
その状況があまりにも惨劇の始まりに似ているせいか…放っておけない。
しかも今、歌恋はライト様にまで気に入られてしまった。
ルーク様はともかく、ライト様のそばに行くことになってしまっては、本当にジェシカと同じ物語を辿ってしまうことになるだろう。

たとえ王のルーク様でも、ライト様の命令だとしたら逆らえない。

もし、ライト様が歌恋を、金の国に迎えるとでも言ったら…。

俺は、俺は。
アイツを。ライトを殺す。

歌恋が殺される前に、ライトを何があっても殺す。

…俺の命を掛けてでも、妹を守りたい。

その思いが届かなかった今、俺の生きがいは歌恋に向いてしまった。

ジェシカと同じ道は歩んで欲しくない。

それが全てに敵に回してでも…だ。

ジェシカと歌恋を重ねてしまっていることは良くないとは思う。

だが…全てが似ている。
いや、同じなんだ。
このままいくと、歌恋は死んでしまう。

それは阻止しなくては…。

歌恋…ジェシカ…。

守らなくては!!!


ルークSide

「あぁぁっ遅い!!!」
「ルーク様落ち着いてください。」
「だがなぁっ!」

アリスが冷たく言い払うが、俺は落ち着きを取り戻せなかった。

歌恋が、ライト様に気に入られてしまったらどうする!
いや?今二人きりじゃないか!!!
もし!歌恋が何かされてしまってからでは遅い!!

ガタンと音を立てて席を立つがどうしていいか分からずまた座る。

「くそっ!アレンはどうした!!」
「まだですね。…変な気でも起こしていなければいいのですが。」
「なんだ?」
「いえっ。何でもないです。少し様子を見てきましょう。」
「おう。」

アリスが音もさせずに部屋から出て行った。

あいつも変わった奴だよな。

「かーれーんーーー。」

ため息混じりに呼ぶが歌恋が返事をするわけもなく時間だけが過ぎていく。

ガチャリッ

「アレンか?」
「残念だったな。俺だ。」
「ライト様!」

慌てて立つと椅子が倒れる。

「あっ。申し訳ありませんっっ。」
「いいのだ。座れ。」
「はい。」
「…俺はアイツが気に入った。」
「…歌恋ですか?」
「あぁ。金の国に欲しい。」
「っ!!!」

歌恋が!?
やっぱり気に入られてしまったのか。

「あいつには不思議な魅力がある。それに惹かれた。」
「…はい。」
「お前もそうなのだろう?」
「はい。」
「フフッ。お前の意見を聞こうではないか。」
「私の?」
「あぁ。正直に申せ。アイツをどうしたい。」

正直に…。

「元いた世界に帰してやりたいです…。」
「ほぅ。」
「でもっ!そばに…置いておきたいです。ずっと。」
「そうだな。」
「ライト様?」

ライト様は立ち上がり、部屋から出る。

「部屋を用意した。休め。」
「はい。」

歌恋は…?
聞きたかったが、ここまで無礼をはたらいたのにさすがにもう聞けないか。

「あの女はこの部屋の上の4つ上の階にいる。大丈夫だ。手は出していない。」
「え?」
「お前の女だからな。俺には手を出す資格もない…。」

背を向けたまま喋るライト様はどことなく寂しそうにも見えた。

「ルーク。お前変わったな。」
「え?」
「それもあの女のおかげか。」
「…。」
「俺も少し慰めてもらってもいいか?」
「え?」
「あの女のそばにいると落ち着く。いい女と出会ったな。」

それだけ言うとライト様は出て行ってしまった。
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