運命ってありますか?
アリスSide

「ルーク。」
「あぁ…アリスか。」

会談室を出て少しするとルークが見えた。

ルークの事情は黒の国では私しか知らない。

ジェシカのことも、きっと私しかまだ知らないだろう。

…それはジェシカと剣の道に進む前の私が一緒に働いていた時の出来事だった。


~ジェシカ~アリスの記憶

「アリスあそこに怪我した人がいるよ!」
「…そうね。」
「助けなくっちゃ!」

ジェシカは持っていた荷物を放り投げて地面に倒れている人の元へと走る。

「ちょっ!ジェシカ待って!」

私もジェシカの投げた荷物を拾い後を追いかけた。

「やっぱり。魔力が尽きているし、斬られた跡もある。」

ジェシカは治癒魔法が使え、怪我人の治癒を始めた。

「アリスは先に戻っていて。私は、この人を治してからもどるから。」
「わかったわ。無茶はしないでね?暗くなる前に帰ってくるのよ?」
「はいはい。お母さんみたいだねアリスは。」

笑うジェシカを横目に私は家に戻った。
それが私とジェシカの記憶の最後だ。

~ジェシカ~ライトの記憶

俺が黒の国にこっそり行ってみようと思いついたのが始まりだ。

時空転送で黒の国の赤の草原に出ると、山賊のような者たちにすぐ囲まれた。

時空転送魔法はかなり魔力を使う。
しかも結構な距離だったので、それだけ負担は大きい。

それでも、残った魔力で戦った。
最後の一人に斬られ、血を吐きながら最後の魔力でなんとか倒したものの自己再生など出来る訳もなく、少し歩いただけで倒れてしまった。

何時間たっただろうか。
意識が戻りかけて最初に感じたのは、温かい魔力だった。

「…誰だ。」
「あっ。やっと気がついた。大丈夫ですか?」
「あぁ。何だお前。」
「ここで倒れてたので、ちょっとした人助けをしてます。」

笑う彼女を見て、俺は柄にもなく心を惹かれた。

「名前は?」
「ジェシカです。あなたは?」
「俺はライト。金の国の王だ。」
「え…?」

戸惑ったジェシカは、治癒をやめて俺の顔をまじまじと見る。

「えー!?」
「うるさい。」
「あなた王様なの!?」
「無礼だぞ貴様。」
「ごめんなさい。でもっあはは!」
「何がおかしい。」
「なんとなく?あははっ」

こいつ。俺が殴打と知っても態度一つ変えずに…いや態度が悪くなった。

「礼をしたい。金の国まで来ないか?」
「え…でも私…。」
「拒否権は無いぞ。」
「えー。」
「態度!」
「はいっ!あはははっ」
「あきれた。もういい好きなようにしろ。」
「やったぁ。でも、家に帰らなきゃ。」
「伝えておいてやろう。」

俺は持っていた紙に事を書いて、飛ばした。

「あれで家までつくの?」
「あぁ。さぁ時空転送するぞ!」

俺はジェシカからもらった温かい魔力で時空転送した。
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