Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
ジルは近くにいたカチュアを下がらせて、ローグの後ろから跳躍した。
眉間に突き刺さったダガーの痛みに慣れてきた蜘蛛に対して、素早く動き、蜘蛛を翻弄する。
攻撃の的を絞れないように、右へ左へと掻き回す。
蜘蛛の目の前にジルが迫ったときだった。
蜘蛛はそこを狙っていたのか、足を伸ばそうと体を大きく仰け反らせた。
その姿を認めたジルはニヤリと口元を歪め、蜘蛛を飛び越すように跳ね上がった。
突如、蜘蛛の視界からジルが消えた。
その後ろにいたのは、赤々とした炎を燃え滾らせた剣を握るローグだった。
「これで、最後だっ!」
ローグは叫びながら蜘蛛の懐へと飛び込み、力一杯に剣を薙ぎ払った。
ザシュッ!!
蜘蛛を切り裂いた感覚が手元に伝わる。
ぷっくりとした胴体が真っ二つに裂け、その切断面が真っ赤な炎に包まれる。
どす黒い血が辺りに飛び散った。
ギエエェェ〜ェェ〜〜!!
蜘蛛の断末魔が森の中に響き渡る。
ジルは空中でそれを聞いていた。
そして、頭から蜘蛛の頭部を目掛けて落ちる方向を調整する。
蜘蛛の眉間に突き刺さったままのダガーを掴み、落下の勢いに任せて下部へと切り裂いた。