Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
森の中に静寂が戻った。
真っ二つに裂かれた蜘蛛の残骸の傍らで、ジルはゆっくりと立ち上がり、カチュアの元へ近づいた。
彼女はまだ呆然としていて、焦点が定まらず立ち尽くしている。
「カチュア…」
ジルの呼び掛けにハッとした彼女は、脅えた瞳をジルに向けると、その場にしゃがみ込んでしまった。
ガタガタと震える肩を、身を護るようにして抱え込みながら。
無理もない…。
昨日に続いて、こんな戦闘シーンを間近で体験してしまったのだから。
しかし、ジルはここでゆっくりしている場合ではないと感じていた。
ジルの予感と考えが正しければ、まだ危険は去っていない。