Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
STAGE 8
クリストファーの姿をこの目で確認したとき、ジルは背筋にゾクリとした悪寒が走るのを感じた。
そんな…、
まさか……。
先ほど感じた嫌な予感と、まだ危険が取り除かれていないという予測。
そのひどく恐ろしい予想など当たってほしくなかった。
目の前の男の存在が、ジルの思考を掻き乱し、心臓が早鐘のように鼓動を打っている。
そんな動揺したジルを、クリストファーは何の感情を込めもしない無表情な目で見据えていた。
「クリスっ!」
カチュアが彼の元へ駆け寄ろうとしている。
「カチュア、待って」
すかさずカチュアの腕を取り、彼女を制した。
カチュアは眉間にシワを寄せて、怪訝な顔でジルを見た。
どうしたの?
ジル?
一刻も早く愛しい人の傍に駆け寄りたい。
そんな衝動に駆られているのは分かる。
だが、ジルだって何も考えずにカチュアを制止した訳ではない。
「ジル、どうした?」
ローグもジルの行動に戸惑っているようだ。
心配そうにジルを見遣り、そしてクリストファーを窺うように視線を動かしている。