Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
しばしの沈黙の後、クリストファーは俯いた顔を上げると、微笑して口を開いた。
「やっぱり、姫のことが心配でね。
後をつけてきたんだ」
その笑みはとても温かく、とても優しい。
白馬の鬣を梳いてやっていたときのように温もりに溢れていた。
尤もらしい理由を述べているが、そんな答えで納得するジルではなかった。
クリストファーをキッと睨み上げ、声を荒げて言った。
「あの蜘蛛はこの森の生き物じゃないわっ!」
「??
蜘蛛って、何のことだい?」
クリストファーは首を傾げて、ジルの言っていることが分からないといった仕種をする。
「あの蜘蛛よ!」
ジルは真っ二つに裂かれて横たわる蜘蛛の残骸を指差した。
「蜘蛛の現れた茂みの影に、魔法陣があったわ」
ジルのこの言葉に、クリストファーの眉がピクリと反応した。
「なんだって!?」
初めて聞くことにローグが驚きの声を漏らす。
カチュアもただ戸惑いの表情を浮かべていた。
「人口的に召喚されていたのよ。
そして、カチュアが姿を現すとカチュアに狙いを定めてた…。
誰かがカチュアを殺そうとしたのは明白よ!」