Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
それは谷の底から響くような低音で、何も知らない君たちは滑稽だと言わんばかりに、クリストファーは飄々と言ってのけた。
その瞬間、カチュアの全身に悪寒が走った。
「ど、どういうこと…」
かろうじて喉から声を絞り出す。
「国王は本当の病気じゃないってことさ。
意図的に体を弱くさせられたんだ。
毎日の食事に、微量の毒を盛られてね」
薄笑いを浮かべるクリストファーは、もはや悪魔のようにしか映らなかった。
「な……」
衝撃の事実の告白に思考がついていかない。
受け入れ難い真実を拒否しようとするのか、目の前が真っ暗になるような目眩さえ覚える。
この男は姫だけでなく、国王の命をも脅かしているというのか。
もうこれは謀反としか言いようがない。
「もう回復する見込みはない。
姫が国王の後を追うか、国王が姫の後を追うか…。
どちらにしても、イスナの歴史はここで幕を閉じるのだ!」