Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「そんなこと、させる訳ねぇだろ!」
ローグが仕舞ったばかりのロングソードを抜いて怒鳴った。
「煩いっ!
貴様は邪魔するな!!」
鋭い眼光でローグを睨むと、ドンッという音と元に、クリストファーを中心に円形状に衝撃波が生じた。
すると驚くことに、それが合図であったかのように、辺りは穏やかな気候から一変した。
そよ風が風速何十メートルかの突風に変わり、快晴だった空にはどこからともなく暗雲が立ち込める。
陽の光が遮られ、気温が一気に何度か下がった気がした。
ジルは衝撃波と突風から身を掬われぬよう踏ん張り、右手を額に翳すと、左手でカチュアを支えた。
カチュアは髪を靡かせる風に呼吸の辛さを感じながらも、飛ばされぬようジルにしがみついている。
激しく吹きすさぶ風の中心。
そこは台風の目のように穏やかだ。
そこに佇んだクリストファーは恐ろしく醜い表情でカチュアを睨みつけている。