Red Hill ~孤独な王女と冒険者~

「そんなこと、させる訳ねぇだろ!」


ローグが仕舞ったばかりのロングソードを抜いて怒鳴った。


「煩いっ!
貴様は邪魔するな!!」


鋭い眼光でローグを睨むと、ドンッという音と元に、クリストファーを中心に円形状に衝撃波が生じた。


すると驚くことに、それが合図であったかのように、辺りは穏やかな気候から一変した。


そよ風が風速何十メートルかの突風に変わり、快晴だった空にはどこからともなく暗雲が立ち込める。


陽の光が遮られ、気温が一気に何度か下がった気がした。



ジルは衝撃波と突風から身を掬われぬよう踏ん張り、右手を額に翳すと、左手でカチュアを支えた。


カチュアは髪を靡かせる風に呼吸の辛さを感じながらも、飛ばされぬようジルにしがみついている。



激しく吹きすさぶ風の中心。

そこは台風の目のように穏やかだ。


そこに佇んだクリストファーは恐ろしく醜い表情でカチュアを睨みつけている。

< 110 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop