Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
ジルがカチュアを抱きとり、そのまま地面に倒れこむ。
カチュアが地面に激突しないよう身を反転させたとき、マジックアローはジルの肩や耳を掠めて洞窟の岸壁に突き刺さった。
マジックアローの行方を確認し、素早く立ち上がる。
倒れこんだときに打ちつけた肩に痛みが走るが、そんなことは気にしていられない。
カチュアを後方に下がらせると、クリストファーへ襲撃を掛けに迫った。
ローグもクリストファーへと迫っていた。
ロングソードで威嚇し、相手の動きを封じ込めるように大きく振るう。
するとクリストファーはローブの中から細長い金属製の杖を取り出して応戦し始めた。
ガキンッ
キン!
金属と剣のぶつかり合う耳障りな音が響く。
さすがにその杖でローグに攻撃することはなかったが、魔法使いとは思えない身のこなしで、ローグの剣を受け止め回避し続けた。
そこへジルが加勢に加わる。
剣を受け止めたクリストファー。
押された勢いで一瞬体勢が崩れた。
その隙をジルは見逃さない。
クリストファーの左腕を捻り上げて頭を下げさすと、すかさずそこへ後ろ回し蹴りを放った。
足に残る軽い痺れがクリーンヒットを示している。
数メートル後方へ吹っ飛ばした。
後方へと弾かれたクリストファーは、足を踏ん張り、転倒を免れたようだ。
杖を握った手を伸ばしてバランスを取る。
視線を上げたクリストファーの瞳は憎悪に満ちていた。
「邪魔、するなーーー!!」
絶叫に近い怒鳴り声と共に、杖を天高く翳す。
両手で大きく突き出すと、杖の先端から青白い焔が放たれた。
うねるように渦を描きながら焔はジルに迫りくる。
まるで業火を纏った龍のように。