Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「ちっ。小賢しい真似を」
クリストファーは悔しそうに舌を鳴らした。
「もう諦めろ。
こんなことをして何になるんだ」
「そうよ。姫や王の命を狙って、どうするつもり?
イスナの国を乗っ取ろうとでも言うの!?」
クリストファーの心中を探りたく、ジルは追求した。
それにピクリと反応を示したクリストファーは、
「乗っ取る?
そんなものには興味はない。
これは……、これは………」
杖を握る力を強め、肩を震わせながらこちらを睨み返してきた。
一呼吸の間の後、再度杖を振り被ると、喉の奥から声を絞り出して絶叫した。
「これは、復讐だぁぁあ〜〜〜〜!!」
また、あの焔の龍がくる。
そう直感したジルは考えるよりも早く身体が動いていた。
直感の通り、同じ焔が杖の先端から繰り出されるのを目にしたのは、隣のローグを突き飛ばしたときだ。
すぐに自分も横っ飛びで地面に伏せる。
ジルの頭上を焔の龍は、轟音を発し、旋風を巻き起こしながら通過していった。
首だけを捻ってその行く先を目で追う。
心配していたカチュアの姿は後方になくホッとした。
それも束の間だった。
信じられないことに、焔の龍は後方の岸壁にぶつかるかと思いきや、方向を転換したのだ。
壁にぶつかる寸前、速度を弱め、大きな半円を描いて、再度龍の顔がこちらに向いた。
大きく牙を剥いた龍の顔が見えた気がした。