Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
STAGE 9
カチュアは項垂れているクリストファーにそっと近づいた。
ジルはそれを止めようとしたのだが、ローグに制されてしまった。
ローグはジルを見つめながら首を振る。
自分たちが割って入ることではない。
そう言っているようだ。
クリストファーは何も言うことなく、地に視線を向けて佇んでいた。
ジルに殴られた頬が痣になり、とても痛々しい。
カチュアを殺すくらいの力は残っている。
ローグたちと戦えない訳でもない。
それでも彼はこの状況に観念し、すっかりと戦意を喪失させていたのだ。
カチュアがそうさせたのだろう。
彼女が慕ってくれていたのを忘れることはできなかった。
この女を憎しみの対象として見られなかった。
すべてを投げ捨てて、復讐の鬼と化すことはできなかったのだと悟った。
カチュアはクリストファーの横に膝をつくと、彼の顔を覗いた。
安堵と悲しみ、そして悔しさを帯びた瞳で。
ずっと信じていた。
まさかこんな形で裏切られるとは思いもしなかった。