Red Hill ~孤独な王女と冒険者~

『国王』。

その言葉にクリストファーは嫌悪を感じた。


喪失していた復讐心の影が心の奥から顔を覗かせる。


だが、くクリストファーはそれをぐっと押さえつけた。


その復讐心以上にカチュアの言葉がグサリと胸に突き刺さるのを感じずにはいられなかったからだ。


初めて感じる罪悪感のようなものも込み上げてくる。



国王に対する嫌悪感と復讐心。

姫への信頼の裏切りの罪悪感。

そして、企みが失敗した後の虚無感。


いろいろな思いが交錯し、クリストファーは唇を噛んだ。



「でも、クリス…。
あなたが以前からこんな人だったなんて信じられない。
私に向けてくれた笑顔を偽物だったの?」


カチュアの声は微かに震えていた。

頬を包む手も震えている。


クリストファーは痛いほど噛んだ唇をほどき、

「すまない……」とだけ言った。


「ねぇ。クリス」


カチュアは彼に施している魔法の手を止めて、掌を頬から離し尋ねた。


「何があなたをそうさせてしまったの?
何があなたを変えてしまったの?
理由があるなら教えてほしい…。
イスナの姫としてではなく、あなたを信頼していた者として、私は理由が知りたい…」


真っ直ぐに見つめるその視線をクリストファーは直視できなかった。


今更ながらに湧いて出た罪悪感がそうさせていた。


何も答えないクリストファーを、カチュアはそれでも何か発してくれるのではないかと淡い期待の元に待った。

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