Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
やがてカチュアは諦めたように、「…そぅ」と溜め息混じりに呟くと、ゆっくり立ち上がってクリストファーに背を向けた。
背中が嘆いている。
しっかりと気を持たねば。
湧き上がる感情を抑え、一歩ずつクリストファーから離れる。
これからどうしようか…。
肩を落としてジルの傍まできたとき、
「……半年前」
ポツリと発したクリストファーの言葉が聞こえた。
反射的に振り返る。
クリストファーは変わらず視線を下に向けていたが、ようやく話す気になったらしい。
「半年前に、親父が死んだ…」
クリストファーは空を仰ぎながら言った。
誰かに向けて話しているような、それもと独り言のような。
カチュアはもう一度クリストファーに近づき、そこに佇んだ。
彼がどうして変わってしまったのか、尋ねてはみたものの、本音は聞きたいのか聞きたくないのかカチュア自身にも分からなかった。
「えぇ…」
カチュアは返事をするように頷いた。
その時のことはよく覚えている。
あの時のクリストファーの辛そうな表情は、自分にはものすごく意外で、それでも自分に何かできないかと模索したものだ。
ただ、思うだけで何も行動できなかったのを今でも悔やんでいる。