Red Hill ~孤独な王女と冒険者~

今、クリストファーは何と言ったのだろう?

カチュアは自分の耳を疑った。


「え……?
今、なんて……」


そう言葉を紡ぎ出しながらも、カチュアは頭の中でクリストファーの言葉を反芻していた。


彼の父を、私のお父様が、殺した…?


とても信じられないことに頭が混乱してくる。

とても衝撃的な言葉だった。


「う…、そ……」


「嘘じゃない。
殺されたようなもんだ」


カチュアを遮ってクリストファーはそう吐き捨てた。


その時とことを思い出し、悔しさに拳を地面に叩きつける。

手の甲にジワリと血が滲んだ。



「殺されたようなもの…?」


口を挟んではいけない。

そう思っていたのに、隣で話に耳を傾けていたジルは、疑問を思わず口にしてしまった。


そんなジルをクリストファーは睨み上げる。


いけない、と口を押さえたが、遅かった。


クリストファーはジルを見上げ、ふうっと大きく息を吐いた。


「あぁ…。
あれは、自殺だった」



しばらくの間、沈黙がその場を支配した。


とても悲しげな出来事を話すクリストファーに、そして真相の裏側に迫る状況で、ジルは何も返すことができなかった。


そのままクリストファーが話し続けるのを待つ。

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