Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「自殺、だったの…?」
カチュアがとても信じられないというように訊ねた。
眉根を寄せ、物悲しげな表情でクリストファーを見つめる。
「知らなかったのか?」
疑問に対して疑問でクリストファーは返した。
そして、納得したように何度も頷くと、「そうだ」と小さく答えた。
「ある日突然、親父は自殺したんだ」
原因は知らなかった。
あの不幸があったとき、ただクリストファーのお父様が亡くなったという訃報を教育係のサダソから知らされた。
彼が傷つくかもしれないので、何も聞かないように。
と念を押されたと思う。
だが、それが自殺だったなんて…。
何も知らなかったのは自分だけだったのか。
カチュアは改めて知らされる真実に、口元を両手で覆った。
「だけど、その自殺と国王が…」
どう関係するの?
そう問おうとしてジルは口を噤んだ。
クリストファーの鋭い眼光がジルを睨む。
彼の父の死について、簡単に自殺と終わらせられない理由があるらしい。
クリストファーはジルから視線を外し、空を見上げると話を続けた。
「あれは自殺だった。誰もがそう言った。
しかし、俺には到底信じられなかったさ。
国王の右腕として国のために働き、それを誇りのように思っていた親父が突然自殺するなんて、訳が分からなかった。
それでも、俺はその事実を受け止めようとしていた。
落ち込んでいても仕方ない。親父の仕事は俺が引き継ぐんだって。
与えられた仕事に没頭しようとしていた。
そんな時、すべてが分かったんだ。
そう、去年の『聖・アナの日』に、すべてがな……」
静かにゆっくりとクリストファーは話した。
そして、クリストファーの脳裏にあの時の情景が浮かび上がった。