Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
それに気がついたのは、父が亡くなってから数週間経ったある日のことだった。
いつまでも悲しみに暮れていてはいけないと、父の仕事を引き継ぎ、帳簿に目を通していたとき、記入されている数字におかしな点を見つけた。
帳簿が改ざんされている。
まさかこの国の誰かが、国の金を横領でもしているのか。
訝しく思い、姫の教育係で側近でもあるサダソに相談をしてみたが、まともに取り合ってもらえなかった。
何かの間違いだ。
サダソはそう繰り返し言って、クリストファーの意見を無視したのだった。
それでもクリストファーは、これを明らかにすべきだと思った。
帳簿は改ざんされていて、誰かが横領という犯罪に手を染めている。
これが事実ならとんでもない由々しき事態だ。
間違いではすまされない。