Red Hill ~孤独な王女と冒険者~

誰かに国益を横領されているかもしれないというのに、この事実に対して王は何の対策も取ろうとしない。


それどころか、関係のない親父のことを持ち出してくるなんて…。

……関係のない………?


このときクリストファーの脳裏に一つの仮説が思い浮かんだ。



慌ててクリストファーは父の書斎へと駆け込んだ。


まさか、父が犯人だというのか。

いや、そんなはずはない。
そんなはずは絶対にないんだ。


自分に言い聞かせるように何度も心の中で呟きながら書斎机を漁る。


何を探しているのか自分でもはっきり分からないが、何か証拠のようなものが出てくるかもしれない。

いや、出てこなければいい。



あの国王の不適な笑みが脳裏に甦る。


父の自殺と、帳簿の改ざん記録。

絶対に繋がりがあると確信した。


もしかしたら父の自殺の理由が分かるかもしれない。


父は絶対に横領の犯人なんかじゃない。


自分がその汚名の返上をしてみせる。



机の引き出しを一つ一つ開けて、それらしき怪しいものがないか調べていく。


仕事で使う資料をまとめたものや、行事の記録といった事務的なものがたくさんだ。


中には父の私物の古いアルバムもある。


怪しいものは見つからない。



焦りと苛立ちが募り始めたとき、クリストファーは茶色い革の手帳を手に取った。


スケジュールを収めたもののようだ。


中にはびっしりと予定が書き込まれていた。


その中でクリストファーは父が自殺を図った日のページを捲ってみた。


すると、そのページからハラリと何かが床に舞い落ちた。

何か挟まっていたらしい。

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