Red Hill ~孤独な王女と冒険者~

床に落ちたのは白い縦封筒と一枚の写真だった。


それを拾い上げるとクリストファーは封筒の中身を確認した。



それは、息子へ宛てた遺書だった。


クリストファーは目を通しながら、紙を持つ手が震えてくるのを感じた。



遺書にはまず息子への謝罪から始まっていた。

命を絶つことを許してほしい、と。


そして、その内容はとても信じられない告発文が書かれていた。


帳簿の改ざんのこと。

その犯人が国王本人であること。

国王を咎めると、逆に冤罪を帰せられたこと。

その罪で裁かれることが決まったこと。

それは極刑に値すること。

国王に歯向かったことで、それはもう取り消されることがないということ。


悔しさの入り混じった文面で、それは明瞭に記されていた。


そして最後に、犯罪者として裁かれることだけは納得がいかない。

それを避ける術がないのなら、すべてを曝け出してここに自分で命を絶つ。


そう綴られていた。



頭が真っ白になる思いだった。


それからどうしたのか記憶がない。


気がついたときには、その遺書と落とした写真を手に、城下を彷徨い歩いていた。


クリストファーの心情とは裏腹に、『聖・アナの日』の今宵、街はイルミネーションに煌めいていた。


誰しもが幸せそうな笑みを浮かべ、今夜の祝いを楽しみに通り過ぎていく。


だが、イルミネーションの光と人々の幸せに満ちた笑顔の輝きさえも、クリストファーにはただの白黒の世界にしか映らなかった。

< 135 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop