Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
床に落ちたのは白い縦封筒と一枚の写真だった。
それを拾い上げるとクリストファーは封筒の中身を確認した。
それは、息子へ宛てた遺書だった。
クリストファーは目を通しながら、紙を持つ手が震えてくるのを感じた。
遺書にはまず息子への謝罪から始まっていた。
命を絶つことを許してほしい、と。
そして、その内容はとても信じられない告発文が書かれていた。
帳簿の改ざんのこと。
その犯人が国王本人であること。
国王を咎めると、逆に冤罪を帰せられたこと。
その罪で裁かれることが決まったこと。
それは極刑に値すること。
国王に歯向かったことで、それはもう取り消されることがないということ。
悔しさの入り混じった文面で、それは明瞭に記されていた。
そして最後に、犯罪者として裁かれることだけは納得がいかない。
それを避ける術がないのなら、すべてを曝け出してここに自分で命を絶つ。
そう綴られていた。
頭が真っ白になる思いだった。
それからどうしたのか記憶がない。
気がついたときには、その遺書と落とした写真を手に、城下を彷徨い歩いていた。
クリストファーの心情とは裏腹に、『聖・アナの日』の今宵、街はイルミネーションに煌めいていた。
誰しもが幸せそうな笑みを浮かべ、今夜の祝いを楽しみに通り過ぎていく。
だが、イルミネーションの光と人々の幸せに満ちた笑顔の輝きさえも、クリストファーにはただの白黒の世界にしか映らなかった。