Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
うっすらと積もる雪を踏みしめ、どのくらい歩いただろうか。
クリストファーはそこにあるベンチに無意識に腰掛けていた。
回らぬ頭で状況を整理してみる。
意識的に考えると言うより、勝手に頭の中でぐるぐると脳内を巡っているような、そんな感覚だった。
ふと、写真に目を移す。
古びた写真には、押さない頃の自分と父が並んで写っていた。
クリストファーがスクールに入学したときに撮った記念の写真だった。
写真の中の父はとても嬉しそうに優しい眼差しで笑っている。
もう、何も考えたくはない。
どうしてこうなってしまったのか。
脱力感に茫然としていたとき、いつの間に現れたのか、一人の少女が目の前に佇んでいた。
少女は不思議そうにこちらを覗き込んでいる。
そして、あどけない笑顔を振りまきながら何か言葉を発していた。
何を言っているのか分からなかった。
いや、聞く耳を持っていなかった。
煌びやかな街の情景も、人々の賑やかな喧騒も、今のクリストファーにはすべて色褪せていた。
何言か少女は言葉を発してクリストファーの目の前に手を差し出した。
持っていたものをクリストファーに渡すと、少女はストリートを渡って足軽に去っていった。
「お兄さんにも幸せがありますように」と言葉を残して。
クリストファーは少女から渡されたキャンディをしばらく眺めていた。
幸せ、か…。
そして思う。
神様も皮肉なものだ、と。
こんな日に真実を伝えるなんて。
今日は創造神、双子の女神の生誕を祝う日ではないか。
我ら親子は、神にも見捨てられてしまったのか。