Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
城に使える者として、その職務を全うしてきたつもりだ。
神への冒涜心もない。
毎日の祈りだって欠かしたことなどなかった。
それなのに、それなのに…。
父も帳簿の改ざんのことに気づいていた。
まさかその犯人が国王自身だったとは。
更にその罪を父に着せるなんて。
あり得ない。
長年仕えてきた仕打ちがこれなのか、と。
冤罪で裁かれることはなかったとしても、これでは父は国王に殺されたも同然ではないか。
国王が父を死に追い遣ったのだ。
そして、相談を投げかけたサダソも態度がおかしかった。
あの男も一枚噛んでいるに違いない。
悔しかった。
あんな国王のために父は死ななければならなかったのか。
国民のことなど考えていない、私利私欲のために父を追い込んだ国王に今まで仕えていたなんて。
「くっ……」
悔しさと腹立たしさ、そして悲しみ、それらが混ざり合い、嗚咽となって呻くように喉の奥から漏れ出てくる。
クリストファーは手にあったキャンディと写真を強く握りしめ、その場に蹲った。
押さえようのない感情と共に、溢れ出る涙を拭うことはなかった。