Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
サダソと兵士は姫が去っても変わらず意識は戻らないままだった。
村にいる唯一の医者のポールが毎日、栄養剤の注射をしに来てくれていたのだが、ポール曰く、脈拍、血圧ともに正常。
眠っているのにほぼ変わりない状態だとのこと。
クリストファーによほど強い魔法を掛けられたのだとジルは察した。
その魔法とは何なのか、ジルには想像もつかないが、何故かそう感じた。
そして、カチュアを連れてローグが旅立ってから二日後、二人はようやく意識を取り戻したのだった。
事のあらましを説明した後も、サダソはただ呆然としたままだった。
ただ一言、「何てことだ…」そう呟いた後、何も言葉にすることはなかった。
とても信じられない。
と言いたいのだろうが、これは事実に変わりない。
「あなたは難しいお立場でしょう。
ですけど、あなた方の起こしたことで、一人の男の恨みを…。そしてそれが今回の事件を引き起こしたのです。
少なくとも、国王とあなたはその責任を取られるべきだと思います」
自分に意見する権利などないのはよく分かっている。
だが、それに反抗してでもジルはそう伝えておきたかった。
護りたいものを傷つけた、そしてここまで大きな事件に発展してしまった原因は何なのか。
国王にもサダソにもよく考えてほしい。