Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
それから程なくして、彼らはリィズ村を去っていった。
体力面を心配してジルは護衛役を買って出たのだが、それはサダソに断られてしまった。
意外にも兵士の回復が早く、あの分では多少のことでは大丈夫だろう。
さすがは日常身体を鍛えている兵士だ。
彼らがイスナへ戻ったこともあり、リィズ村は日常を取り戻していた。
何もなかったように、のんびりと時間が過ぎていく。
ジルはもう一度、窓の外の夕焼けに眼を向けた。
ローグがカチュアを連れてイスナへ向かってから一週間が経つ。
ローグはもうイスナへ到着しただろうか。
ローグが戻ってくるまで、最低でも数日はかかるだろう。
片道はあの豪華な馬車だが、帰りは乗合馬車の乗り継ぎと徒歩になる。
どのくらいかかるのか、実際にはよく分からない。
疲労も溜まっていることだ。
もしかすると、何日かはイスナで過ごしてくるかもしれない。
ローグと行動を共にするようになってから、別行動は何度あっただろうか。
一日二日は顔を見ないこともあったが、こんなに長く離れるのは初めてだ。
ガランとした部屋の中を見渡してしまう。
こんなに広かったっけ…?
窓際の位置にサアドテーブルを挟んでベッドが二つ。
自分の隣のベッドはメイキングがなされ、白色のシーツが清潔感を滲み出している。
その向こうの、扉に近い位置には小さなテーブルとチェスト。
ローグがいない。
それだけで、それらも閑散として目に映る。
たった一週間のことなのに、ジルは何となく寂しさを感じ、またそれを新鮮とも感じるのだった。