Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「はぁ、はぁ………」
肩で息をしながら、相手を見据える。
「ずるいっ!
魔法を使うなんて」
むくれた顔でジルが発した。
そう、今のは魔法だ。
規模はごく小さいものだが、爆発の魔法をローグは使ったのである。
よく見ると、ジルの前髪が少し焦げていた。
純粋な手合わせに魔法を使用するなんて反則だ。
そんな思いを込めながら睨むジルに対してローグは、
「俺は魔法剣士だぜ?」
その場に胡座を掻いてニッと笑った。
魔法も実力のうち、使ってなにが悪い。
というのがローグの言い分のようである。
ぷうっと頬を膨らませたジル。
しかし、言い返すのも諦めたのか、無言でそばに置いてあったタオルを手に取ると顔を埋めた。
額に浮かび上がった汗を拭う。
不意に溜め息が出てきた。
今日はなんだか身体を動かしてもスッキリしない。