Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
「いらっしゃい」
<ぽんぽん亭>の扉を開けると、店のウェイトレスのミシェルが元気のいい声を張り上げた。
ぽんぽん亭とは、村の大衆食堂兼居酒屋で、リーズナブルな値段とメニューの豊富さが売りの店だ。
村で過ごす間、二人はよくこの店に出入りしている。
先ほどシャワーを浴び終えたジルとローグは、夕食のためにここへやってきた。
二人の顔を見たミシェルは、明るい表情をさらに明るくして二人をいつものテーブルへ案内する。
ミシェルはこの食堂の看板娘だ。
ジルより一つ年下だが、身長は高くスラリとした足の長いスレンダー美女で、村では人気者だ。
ミシェル目当てにやってくる村人も少なくないらしい。
「俺、ビールね。ジルは?」
「うん。じゃあ、一杯だけ」
オーダーすると、すぐにビールは運ばれてきた。
ぽんぽん亭は今日も大賑わいで、各テーブルでは仕事を終えた男たちが、ビール片手に赤ら顔で談笑している。
いつもと変わらない光景。
賑やかな笑い声は絶え間なく広がり、店内を覆っていた。
「くぅ〜。うめぇ」
冷えたビールを勢いよく喉に流し込むと、ローグは堪らずそう漏らした。
昼間は力仕事のアルバイト、それからジルとの手合わせ。
一日動いた身体は、それだけでビールの味を美味しくさせているようだ。