Red Hill ~孤独な王女と冒険者~
ピグー(豚に似た動物)の照り焼き。
山菜とキノコのサラダ。
ふわふわ卵のオムレツ。
などの注文した料理が所狭しとテーブルに並ぶ。
二人分にしては多いその料理だが、ローグの食欲は旺盛で、次々と平らげていく。
「それじゃ、今回の旅はそんなもんだったわけ?」
料理を運んできたミシェルが、盆を持ったままジルたちの席に居座りついて、冒険談を聞き入っていた。
ミシェルのいつもの行動だ。
帰ってきた二人の話を聞くのが楽しみらしい。
もしかしたら、いや、もしかしなくても、彼女は二人のような冒険者に憧れているのかもしれない。
「ま、今回はお使いだからさ。
危ねぇことはないさ」
串焼きを頬張りながらローグはグイッとビールを呷る。
そして空になったジョッキをミシェルに渡すと仕種で次のジョッキを注文した。
「もっと他にないの?
捕らわれたお姫様を危機を顧みず助けに行く、とか。
ドラゴンの宝玉の謎、とか。
洞窟に眠る財宝、とかさっ?」
ミシェルは受け取った空ジョッキをさげると、新しいビールをサーバーから注いでローグの目の前に置いた。
大きな瞳をキラキラと輝かせながら身を乗り出してくる。
「それはお伽話でしょ?
実際、魔物の巣食った洞窟に財宝なんて、滅多にあることじゃないもの」
サラダを突つきながらジルが苦笑する。
そう、例え洞窟に財宝が隠されていたとしても、その手のものは既に盗賊やらにお宝を掻っ攫われていることだろう。
無駄にモンスターを相手にし、挙句にお宝はどこにもないというのが堕ちである。